先日、エブリーは「リテールメディア」実現に向け、食品卸である加藤産業・旭食品から総額24億円の資金調達を実施いたしました。「リテールメディア」とは、これまで分断して存在していたオンライン・オフラインの購買を起点としたデータを統合し、小売・メーカーの販促DXを進めるとともにユーザーへ1to1のサービスを提供するものです。エブリーのエンジニアとしてこの「リテールメディア」へ関わる面白さについて、CTOの今井に聞きました。
今井 啓介
CTO 開発本部長 兼 DELISH KITCHEN開発部 部長
2015年新卒でサイバーエージェントに入社。Androidエンジニア、Webエンジニアとして生配信サービスの立ち上げに携わる。2016年9月、株式会社エブリーにエンジニア第一号入社し、DELISH KITCHENのAndroidアプリ、Webサイトの立ち上げに従事。2021年7月DELISH KITCHEN開発部の部長就任。同年10月、執行役員 CTO 開発本部長に就任。
「リテールメディア」の可能性
ーなぜ「リテールメディア」に取り組むのでしょうか?背景について教えてください。
今井:米国ではリテール領域のデータを活用した広告ビジネスがトレンドとなり、サーチメディア、ソーシャルメディアに続く第3の波として「リテールメディア」が急速に立ち上がっています。日本においても、コロナ禍による購買行動の変化やサードパーティクッキーの廃止など、広告やマーケティング、さらに販促のあり方が急速に変化しており、購買を起点にした「リテールメディア」の重要性が高まってきています。
ー国内の小売・メーカーはどのような課題を抱えているのでしょう。
今井:小売の課題は店頭集客と来店されたお客様への販売促進、そして店舗運営効率化や販促DXです。エブリーが導入を推進してきた店頭サイネージ広告「ストアビジョン」は、店頭のマスメディアとしての役割を果たしてきた一方で、小売の課題である店頭集客とロイヤルカスタマーの創出という点についてはまだ十分なアプローチができていないと考えています。
メーカーとしては大きく2つの課題があります。1つ目が、より購買に寄与する面での広告出稿。TVCMのような幅広いリーチへの認知施策だけではなく、実際の購買行動に寄与するような購買に近いファネルでの広告掲載が求められています。
2つ目が、LTV向上。ロイヤルカスタマーを獲得・育成していく上で、継続的に顧客と接点を持ちながらフルファネルでマーケティング活動を行っていく必要があります。
ーそういった課題に対して、「リテールメディア」構想ではどんなサービスを提供していくのでしょうか
今井:まずは、店頭サイネージの拡大と小売アプリの開発・導入を推進していきます。さらにその後は、オフラインの店内行動データとオンラインの行動データを統合したデータダッシュボードを構築し、効率的な店舗運営のための購買を起点としたデータ活用、すなわち販促DXを進めます。
そして小売アプリが「リテールメディア」として普及してくると、今度はユーザー数3,000万人以上・レシピ本数50,000本以上の基盤を有する『DELISH KITCHEN』アプリのデータとリアル店舗・小売アプリのデータを統合したプラットフォームを構築します。
ー具体的にはどんなことが可能になりますか?
今井:店頭サイネージは、導入拡大とともにAIカメラやビーコン連携を行い店内行動をデータ化し、実際の視聴者層や視聴維持率をもとに売上拡大に向けた改善提案を行います。これにより、店内行動データをもとにサイネージへ配信する動画の訴求内容を最適化したり、小売店の配架や棚割りの調整をしたりといった店舗運営の効率化・販促DXができるようになります。
小売アプリは、レシピ動画コンテンツの掲載やユーザー送客など『DELISH KITCHEN』のアセットを最大限活用しながら、ネットスーパーやウェブチラシチラシ、クーポン、ID連携などを基本機能として備えたオープンプラットフォームによるサービス提供を行います。例えば、店外にいるユーザーへ、店舗での購買履歴をもとに小売アプリ上で『DELISH KITCHEN』のレシピを提案し来店を促進したり、来店したユーザーへ視聴データをもとにクーポンやお得情報をポップアップ通知で配信してクロスセル・アップセルへ繋げることが可能になってきます。
また、アプリで得られる行動データ、小売業が持つ仕入れデータやPOSデータに『DELISH KITCHEN』のファーストパーティデータを融合するデータ閲覧ダッシュボードを構築。分断されていたデータを横断的に分析できるようにすることでデータに基づいた販促の効果検証を実現し、店舗運営の効率化や売上の最大化を支援します。
エンジニアとして「リテールメディア」に関わる魅力
ーその中で、エンジニアはどういった部分に絡んでくるのでしょうか。
今井:サイネージ広告をスマホと連携して店内外へ拡張していくDXの社会実装を実現していくための役割を担っています。つまり、オフラインのサイネージ・ビーコン・AIカメラなどで収集した店頭行動データと、『DELISH KITCHEN』アプリのレシピ視聴データ、小売アプリ内のクーポンや購買データなどをデータで統合し、『DELISH KITCHEN』をプラットフォームとして構築していきます。
ー「リテールメディア」構想の根幹となる部分に直接関わることができるんですね。エンジニアとして「リテールメディア」構想に携わる面白さはどこにあると思われますか?
今井:実店舗のオフラインデータが拡充していく中で、アプリやウェブなどオンラインのデータといかに突合して活用していくかが大きなテーマであり、エンジニアリングで解決すべき課題としては大きく2つあります。
1つは、ビッグデータをどのように扱っていくか。データを活用するためには、大量のデータの質を担保しながら管理・維持していくための土台作りが重要です。また、個人情報保護法により国内外で個人情報の受け渡しがシビアになってきています。お客様やユーザーのプライバシーを保護しながら1to1のサービス提供していくために適切なデータ活用を行うために、プライバシーテックなどへの技術的挑戦をしていかなければいけません。
もう1つは、店内外でシームレスに繋がった体験を提供していくべく、オンラインのレシピ視聴からオフラインの店内行動まで含めて複数のサービスに渡った統合的なプラットフォームとしてのUI/UXを構築する技術が問われます。
加えて、1to1でユーザーに合わせてパーソナライズし商品・レシピ情報などをレコメンドするためにはAI、機械学習の技術ももちろん必要です。
独自データの蓄積を強みに、「リテールメディア」市場を開拓
ーさまざまな技術的課題をクリアしていく面白さがあるんですね。プラットフォームやDXを掲げる会社は数多くある中で、エブリーならではの強みや魅力はどこにあると思われますか?
今井:『DELISH KITCHEN』が保有するプロ考案の50,000本以上のレシピコンテンツと、合計利用者数3,000万人のオンライン基盤、そしてサイネージ設置店舗数1,800店以上のオフライン面での基盤。またそれらによって蓄積される独自データが「リテールメディア」を推進していく上での強みだと思っています。
さらに、先日発表した食品卸である加藤産業・旭食品との協業により、今後小売との連携を強化・拡大させていく下地が整いつつあります。『DELISH KITCHEN』のユーザーグロースのノウハウを活用して、手触り感を持ちながら「リテールメディア」の領域を開拓していける環境は、エブリーならではの魅力です。
ー最後に、エブリーのエンジニアにはどんな方に来ていただきたいと思っていますか?
今井:下記のような方は大歓迎です!
・新しい市場を自ら開拓したい方 ・プラットフォーム全体のUI/UX、サービスの繋がりの設計をしたい方 ・成長産業の変化に対して柔軟でポジティブな方 |
今井:『DELISH KITCHEN』開発部は、レシピだけでなく「食」に関わるより幅広い領域での課題解決をすべく新機能やサービスを発展させています。
その中の1つが、今回お話した「リテールメディア」構想でリテールDXを推進していくことです。また、先日『DELISH KITCHEN』アプリユーザー向けにヘルスケア機能をリリースしました。『DELISH KITCHEN』は単純なBtoBでもBtoCでもなく、toBとtoCの両面に向けて「食」にまつわる課題解決のため多角的にアプローチをとり続けていきます。エブリーのエンジニアについて、もっと詳しく知りたい!という方はぜひ記事下のリンクからお話を聞きに来てください。
▼関連記事
・『DELISH KITCHEN』を運営するエブリー、加藤産業と旭食品から24億円を調達。「リテールメディア」の拡大に注力。