OMO時代のメディア営業職の変化 - 単発の枠売りではなく、長期スパンでのコンサル要素が求められる時代に

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今期から、小売やメーカーなど、toB向け事業の推進を行う「ソリューション本部」が「データソリューション本部」に名称を変更しました。今後の戦略をどう描き、どのように動きが変わっていくのか、データソリューション本部長の鵜飼に展望を聞きました。


執行役員 データソリューション本部長
鵜飼 勇人
2006年慶應義塾大学卒業後、トーマツ コンサルティング株式会社(現:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)に入社。
2008年1月よりアクセンチュア株式会社に入社、金融業界向けのマーケティング事業に従事。2011年4月、グリー株式会社へ入社し、プラットフォームの事業戦略、グローバル展開を担う。2013年4月よりリブセンスに入社、キャリア事業部長として転職サイトなどの運営を主導。2017年7月、株式会社エブリーに入社、経営企画としてリテールソリューション事業の立ち上げに従事。2019年執行役員就任。



***前編の記事は以下よりご覧ください。***

データ活用でクライアントに新たな価値を提供。今期新設したデータソリューション本部の展望とは  

組織における”データの民主化”を目指し、データ活用人材を育成

ーデータを活用した食品・飲料メーカーのマーケティングDXは、『DELISH KITCHEN』だからこそ挑戦すべき領域と言えそうですね。今後はどのようにデータ活用を推進していく予定ですか?

鵜飼:現段階で確定している施策として、全社員の2割が「データベース知見・データ分析設計力・SQLによるデータ抽出力」を一貫して身につけた人材になるよう、育成の準備を進めています。すでにエンジニアやPdMなどデータを日常的に扱っているメンバーも多いですが、特に飲料・食品メーカーのクライアントに日々相対するビジネス職のメンバーは1からデータベース上のデータと向き合い、分析設計力を高め、SQLを習得してもらい、実践的に使ってもらえるようサポートを進める予定です。

「SQLの習得」は、データ利活用が通常業務の一環として浸透している証の1つに過ぎませんが、目的は全社レベルでデータに関する感度を高め、データの民主化を進めることです。エブリーに限った話ではなく、今後はどのような職種でも”データを扱える人材”かどうかで市場価値が大きく変わっていくと考えています。

昨年設立されたデジタル庁からは、今後デジタル人材の育成・確保に取り組むことが発表されています。首相官邸が発表している文書にも、小中高においてプログラミングを必修化するなど、情報教育の底上げを政策の1つとしています。社会人のリカレント教育についても同様に言及されており、デジタル領域の知識は、すでにプレイヤーとして活躍している世代も看過できないものです。そこでエブリーは、全社レベルでスキルの底上げに注力することに決定しました。

▼参考:デジタル庁
https://www.digital.go.jp/policies/posts/digital_human_resources

▼参考:首相官邸文書
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20210618/siryou1.pdf 

 

ーデータを活用するための手段として、SQLがよく掲げられているのは耳にするものの、ビジネス職にも必要になってくるんですね。「データベース知見・データ分析設計力・SQLによるデータ抽出力」の3つのスキルは具体的にどんな内容なのでしょうか?

鵜飼:まず大事なのが、データベース知見です。「自社メディアがファーストパーティデータとしてどんなデータを保有しているのか」「それがどのような形でデータベースに格納されているのか」「今は取得できていないけれど本質的には将来獲得が必要となるデータは何か」などを把握することで、データ分析におけるポテンシャルを見極められたり、プロモーション設計において追加取得が必要なデータが何かを考えることができます。この知見は、見方を覚えればすぐに習得できるものです。敬遠せずにデータベースの構造理解を一度してしまえばその後のステップに大いに役立てることができます。

一方で、そのデータベースから自身の確認したいデータを加工して抽出するのがSQLです。実際に手を動かすスキルを身につけるようなイメージですね。SQLは実践ももちろん必要ですが、いわゆる教科書的な参考書が多く存在しているのでケーススタディを繰り返せば習得しやすいスキルだと思います。

鵜飼:育成しにくいのが「データ分析設計力」です。これはデータ活用に必要なスキルとして挙げているものの、クライアントへのソリューション提案、社内での施策立案など幅広いビジネスシーンにおいて必須となる考え方とも言えます。教科書的にノウハウを教えにくく、かつビジネスパーソンとして高度なレベル感を求めていると思います。

例えば自分が担当している仕事の方針を策定する時。意思決定をする時。他社のサービスとアライアンスを組む時。自社がどんな課題を抱えていて、どんな打ち手をとるべきなのか、その判断をする際に欠かせないのがデータ分析設計力と言えます。この思考が備わっていないと、いくらデータベース知見があっても、SQLを身につけてデータ抽出ができたとしても、根本の課題設計から間違ってしまいます。分析設計が正しくできていないと、本質的なデータソリューションに結びつかないのです。

エブリーとしてはこの3点を、多少の前後はあれど同時に習得していくことが重要だと考えています。どれか1つだけ習得したとしても実践的な能力獲得には繋がりにくいですし、通常業務での活用頻度も落ちていきます。組織としてはデータ利活用をソリューションに繋げることがゴールでもあるため、通常業務の内容を変えていくようなイメージです。

だからといって、OJTに任せていては習得速度はあがりにくい。そこで、すでに一定程度データ利活用の知見のある人材がカリキュラムを組み、通常業務とは別でトレーニングできる機会を提供していきます。 

メディア営業は単なる枠売りではなく、データコンサルスキルが求められる時代に

ー飲料・食品メーカーのクライアントに日々相対するビジネス職、つまりアカウントエグゼクティブのメンバーもデータ活用スキルを身につけていくということですよね。マーケティングソリューションの領域において、広告主への提案内容はどのように変化していくのでしょうか。

鵜飼:『DELISH KITCHEN』からのソリューション提案は、短期的な個別の施策の提案に留まるのではなく、クライアントの年単位のプロモーション計画に寄り添い、継続的・連続的に施策を提案することがメインになっていく予定です。

これまで販売していた広告商品は、「タイアップ動画」や「ディスプレイ広告」、「SNSでの認知獲得」など単発施策に起因するものの割合が多いこともありました。しかし今後は『DELISH KITCHEN CONNECT』の基盤を生かす等、複数のプロモーション施策を通してユーザーにどのように訴求でき、態度変容した結果をデータとして蓄積し、広告成果を継続的にモニタリングしたりエンゲージメントの増減を見極めつつ施策投下を検討していくことが広告主の本質的課題解決につながると考えています。

ー単発での施策における数値やブランドリフト調査も大事な指標の1つですが、それら1つ1つの動画広告がどんなユーザーにどんな影響をもたらしていたのかを知ることができると、施策全体の解像度が上がっていきますね。

鵜飼:そうですね。多面的な角度で成果が検証できるようになっていくと考えています。それぞれのファネル1つ1つにおける成果の変動をデータで捉え、中長期でモニタリングすることで、各施策のPDCAを一緒に回せたらと。この体験を多くの広告主に届けていくため、現在「アカウントエグゼグティブ職」としてクライアントの矢面に立ってやり取りをしているメンバーは、単に施策を提案するだけではなく、中長期でクライアントと伴走するパートナーのように動いていただくようになることを想定しています。

すでにデータソリューション本部にはデータアナリストが数名おり、各広告主への提案内容をサポートしていますし、別途データ・AIチームとの連携も行っています。データに関する知見が明るいメンバーを大量採用することも1つの手段としてはあると思いますが、前述したように今後は全社レベルでデータ活用人材を増やしていきたいと考えています。そもそもの土台・知識レベルを底上げし、分析設計の精度や簡易な分析は各担当者である程度完結できるような状態にすることで、意思決定やオペレーション遂行の速度や精度をあげていきたいです。

ー今回はデータソリューション本部における、マーケティングソリューションズ事業についてのお話が中心でした。リテールソリューションズ事業はどのように変化していきそうですか?

鵜飼:流通小売事業者様においては、従前からPOSデータを活用したPI値という購買成果の確認指標が使われています。ただし、来店や立寄、商品を手に取ったりカゴに入れたり等の、購買に至る前の販促施策の成果がどのように効果に結びついているかは十分に可視化できていないと考えています。エブリーのリテールソリューションズ事業では、その一環でデータ取得も支援した上で、見える化までのサポートすることで価値提供していきたいと考えています。

エブリーが運営するメディア、特に『DELISH KITCHEN』は日々多くのタッチポイントを有してユーザーに接しているメディアです。全ユーザーに対して画一的なサービスを提供するのではなく、データを活用すれば、よりユーザー個々人に寄り添った形に変化することができると考えています。それだけのポテンシャルをもったサービスを展開していると思いますので、より一層強固な生活の基盤として、ユーザーの利便性や暮らしを少しでも向上することに貢献したいです。

ーそれこそがエブリーのパーパス「明るい変化の積み重なる暮らしを、誰にでも。」やビジョン「前向きなきっかけを、ひとりひとりの日常にとどける。」に繋がっていきますね。先進的な事例など、今後も発信していきたいと思います!

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