昨今大手企業が参入を表明しているライブコマース事業。いち早くライブコマース事業の運営を行っているTIMELINE STUDIO部で、ライブコマース事業を統括しているお二人に話を聞きました。
(写真左から)
前沢 力
TIMELINEカンパニー TIMELINE STUDIO部 副部長
新卒でジュピターテレコム(現:JCOM )に営業として入社。その後アイチケット株式会社を経て株式会社Gunosyに入社し、広告営業チームのマネジメント、アドネットワーク関連の子会社立ち上げに携わる。AnyMindJapan株式会社ではYouTubeプロデュースなどSNSを中心としたマーケティングに携わり、2022年1月にエブリーへ入社。現在は、TIMELINEカンパニー TIMELINE STUDIO部副部長を務める。
川合 亮輔
TIMELINEカンパニー TIMELINE STUDIO部 副部長
2010年株式会社ドワンゴに入社し、ライブ配信コンテンツや動画コンテンツの企画、制作、技術などを担当。2018年6月、エブリーに入社しライブコマース事業のディレクターとして「CHECK」の運営に携わる。現在はau PAY マーケット「ライブTV」のコンテンツ企画や制作、分析などのチーム全体を統括。2024年4月より、TIMELINEカンパニー TIMELINE STUDIO部 副部長に就任。
ライブコマースの現在地
ーまず、それぞれ現在の業務を教えて下さい!
前沢:TIMELINEカンパニーのTIMELINE STUDIO部の副部長として、ライブコマース事業やSNSマーケティング事業のビジネス面全般のマネジメントや組織運営に携わっています。ライブコマース領域ではキャスティングを中心に企業とのアライアンス等を担当しています。
川合:TIMELINEカンパニーのTIMELINE STUDIO部ライブコマース企画グループにて、ライブコマースを中心としたEC事業の企画・運営を行うグループのマネジメントをしています。同グループには2つのチームがあり、自社ECの店舗運営チームと、「au PAY マーケット」アプリで提供している「ライブTV」向けのライブ・コンテンツの企画・制作チームに分かれています。商品調整から、番組の企画やライブ番組の実施、そして実施後の数値分析までを一気通貫で行っており、番組に出演するタレントやインフルエンサー、KOL(キーオピニオンリーダー)のキャスティングも行っています。
※「au PAY マーケット」はKDDI株式会社、auコマース&ライフ株式会社の共同事業です。
ーライブコマースは新たなマーケティング手法として注目を集めました。エブリーでも2018年から取り組みを開始していると思いますが、現在の市況感はいかがでしょう?
前沢:ライブコマースは、2018年頃から中国で爆発的に盛り上がり、世界中で注目を集めました。その後、日本においても、コロナ禍でオフラインイベントの中止が相次ぐ中、顧客とのタッチポイントとしてライブ配信を行う企業が増え、現在はアパレル企業や美容メーカーなどの事業者が自社の商品を紹介する配信を多く見かけるようになりました。少しずつ成功事例もでてきており、さまざまな企業のマーケティング担当が興味のある領域になってきているのかなと感じます。
川合:エブリーでも、2018年7月から「CHECK」としてライブコマースの取り組みを始めました。そちらは2020年3月にサービスが終了したものの、重複期間も含めて2019年7月からはau PAY マーケットアプリ内の「ライブTV」企画・制作・配信を『TIMELINE』が一手に引き受けています。現在も配信を継続して行っており、先日数えたら、5年間での配信本数は累計8,000本を超えていました。総視聴時間は開始当初に比べて約8倍、ライブ視聴者数は約10倍まで伸びるなど、成長をし続けている事業です。
これだけ多くの制作・配信に取り組んできたからこそ、『TIMELINE』には成功事例やノウハウが蓄積しており、こうした基盤をもとに、ライブコマースをマーケティングに本格活用するコンサルティングサービスを新たに開始しています。
ライブコマース成功の秘訣、「コミュニティ」の正体
ー8,000本のライブ配信実績はすごいですね!この制作実績から裏付けされたコンサルティングサービスということで、ライブコマースを成功に導くためのポイントはとても気になります。
前沢:担当者の方々とお話ししていても、興味はあるけど事例が少なく何をKPIとするのか、どれほどのROIがあるのかという疑問があがります。ハウツーを体系化できていないことも多く、マーケティング手段として活用するにはまだ不安や課題があるという声をよく聞きます。
私たちがまずサポートしていく中でお伝えしているのは、ゴール設定が大事ということです。短期的にはもちろんコンバージョン獲得が必須ですが、最終的なゴールとしては「コミュニティづくり」を目指していくことが重要になってきます。
ーなぜライブコマースで売上を上げていくために、「コミュニティづくり」が重要なのでしょうか?
前沢:ライブコマースを活用する時におさえておきたいのは、買って終わりではなく、買った人がどう動くか、どういう体験をしているのかという視点です。ライブコマースはECサイトで商品購入するよりはるかに非効率な部分があるなかで、それ以上の別の価値を見出せる手法だと思っています。
ライブコマースでの購買体験をしたらSNSで発信して、体験後も引き続き商品を購入して、同じ体験をしたくてまた配信にやってきて楽しむ。このようなサイクルでコミュニティは連鎖的に大きくなっていきます。長期的な視野で設計してコミュニティの形成と成長を作り出していけるかが、マーケティングという観点でみたときに良い結果に繋がるポイントだと考えています。
川合:そこでしか得られないライブ体験を経て商品を購入した方は、ファンとなって繰り返し訪れてくれるので、その商品や企業のロイヤル顧客になってくれるんですよね。商品のファンになってくれる人たちと長期に渡って接点を持ち続けること、つまり「コミュニティづくり」を目指すことが結果、成功への近道だと実感しています。
エブリーがプロデュースしているウェザーニュースキャスターを起用した「晴れのちショッピング」などはまさに強いコミュニティを形成できた事例ですね。
ーでは、実際にその「コミュニティづくり」に必要なこととはどういったことが挙げられるのでしょうか?
前沢:事例を交えてお話できればと思いますが、「マッチング(相性)」×「インタラクティビティ(双方向性)」×「エンスージアズム(熱狂)」の3つの要素が繋がって機能していることがポイントです。
ー具体的な事例を教えてください!
川合:3つの要素がよくわかる、木の屋石巻水産様の事例を紹介します。
木の屋石巻水産様は、宮城県石巻市で地元の新鮮な旬の魚を使った独自の缶詰を製造・販売しています。2022年6月から2023年3月にかけて、人気ゲーム実況者が出演した番組を5回実施していて、販売数累計10,000缶以上という実績を残しました。
川合:まず「マッチング」について、商品と出演者のファン層のマッチングを考慮したキャスティングが何より重要です。このときは人気ゲーム実況者をアサイン。一見関連性のないインフルエンサーのように見えますが、深いファンコミュニティを持っていて、そのファン層と商品のターゲットをうまくマッチさせることができました。「認知」と「人気」の違いを理解し、最適なアサインができるかが成功のポイントです。
また、ユーザーとの掛け合いやエンタメ性があるかという「インタラクティブ」性があることも意識します。ライブ配信は、視聴者の離脱を防ぐためにリアルタイムのアクションがあるかどうかが重要で、それを盛り込んで番組を構成します。今回のゲーム実況者さんは、実際にファンの名前を呼び合いながら商品について語るなど、視聴者との関係構築が上手な点が購買を後押しする大きなポイントになっていました。また本件では、『TIMELINE』側でも「購入すると画面に缶詰が降ってくる」というオリジナルのエフェクトを開発。出演者も視聴者も沸いて、どんどん購入する人が増えていきましたね。
上記の「マッチング」と「インタラクティブ」がうまく機能し、最終的に「エンスージアズム」を生み出せている、ということがライブコマースの成功には欠かせません。ユーザーにとって「視聴する」「モノを購入する」ということは相当な熱量がいることで、そのアクションを乗り越える力があるかどうかは、「ユーザーの熱狂」を生み出せたかどうかにかかってきます。
この事例では、出演者が本気で商品を良いと思って薦めてくれていて、商品について熱く語ることでユーザーをうまく巻き込み、他でも買えるけれどこのライブコマースを見て購入したいとなる良いスパイラルを作ることができました。また、メーカーさんも積極的にライブ配信に絡んでくれて、その熱狂に拍車をかけてくれました。
なお、この時にとった手法がそのまま他のライブコマースでうまくいくということではありません。上記の3要素を満たせるような企画を行いつつ、クライアントの特性や状況に応じて毎回オーダーメイドで設計していくことが必要です。
前沢:またコミュニティ形成の最大のポイントは「長期的視点」で取り組むことです。顧客のロイヤル化に繋げていけるので、これまでにない構造変化を生み出せるかもしれません。
ウェザーニュースキャスターの番組「晴れのちショッピング」の例で言うと、長期的に番組を続けていくことで、SNSではないアプリ内での配信にも関わらず常時多くの視聴者を集めています。普段ファンが利用するプラットフォームではない場所で番組を展開しても、長期的に続けていくことでロイヤル顧客が生まれる証明が出来ています。
これを活用すれば、自社サイトでECをやっている事業者がAmazonや楽天にも店舗を持っていてそちらの売上が大きいということはよくあると思いますが、この状況から自社サイトにライブコマースを投入して購入体験をつくりコミュニティを形成させていくことで、徐々に自社サイトへ売上のシェアをスイッチさせていくことができると考えています。
このような愛とか熱量が伴う体験を生み出せるのはライブコマース特有のもので、普通のマーケティング手法ではたどりつけない境地ですよね。ライブコマースにはそれだけのコンテンツパワーがあるということだと思います。
効果を最大化する『TIMELINE』ならではの事業シナジー
ーこうした成功事例を作り出してこれた、『TIMELINE』ならではの特徴などはありますか?
川合:なによりも動画コンテンツの制作ノウハウですね。私たちは、ライブコマース事業の他にも2016年から開始しているビジネスパーソン向けメディア『TIMELINE』の運営を行っていて、ストーリー性のある長尺動画コンテンツを高い完成度で仕上げる制作力があります。構成や演出の知見も蓄積されているので、エンタメ性を盛り込んだ番組構成も得意です。
また、一昨年から新たに開始したクラウドファンディング機能も提供可能なので、クラウドファンディングの募集開始初日にライブコマース番組を配信するという組み合わせで、1時間で400万円の支援を獲得するという実績も出てきています。
前沢:そして、ライブコマース成功の前提条件として集客があります。インターネットの番組はユーザーが自らアクセスしにいかなければならず、集客を疎かにはできません。基本的にSNSで告知を行い、「生放送の中で決める」とか「視聴者のアクションで結果が変わる」など、ライブ配信を見たくなるような企画を盛り込んで集客に繋げます。特徴としてSNSはプラットフォームごとにユーザーの属性が違うので、出演者や商品の相性、ターゲットとしているユーザーがいるかなどを考慮して選択することも重要です。その違いを理解した集客策の設計は、SNSメディアを運用してきた『TIMELINE』ならではの得意な部分ですね。
ー事業シナジーを生むことで効果を最大化できる仕組みもあるんですね。ライブコマースの可能性はとても広がっていると思いますが、最後に今後の展望について聞かせてください。
川合:企業のライブコマース運用はハードルが高いと思われていると思いますが、私たちは約5年間の運用を通して、そこを乗り越える、クリアできるだけのノウハウが溜まっています。私たちはあえて「モノを売らないライブコマース」と呼んでいるのですが、事業者側は「モノを売っているというよりも、体験を売っている」、そしてユーザーも「演者に喜んでもらうという、その経験を買っている」という構図を作り上げられるかが成功のカギになってきます。こうした事例をたくさん作っていきたいですね。
前沢:さらに今後は、オフラインと連動したことにもトライしたいと思っています。例えば、CMやOOHなど、既存の広告メディアと同時にライブコマースをやる。ライブコマースは影響度の規模感が「狭く深い」ですが、「広く大きく」すべくいろんなところで同時展開できると新しい相乗効果が生み出せると考えています。マスメディアからオンラインメディアへの移行は騒がれて久しいですが、テレビの影響力はまだまだ大きい。リアルタイム性や即時性と掛け合わせることでより深く新しい消費体験を作っていきたいですね。
ライブコマースはまだまだ可能性に溢れる手段ですので、様々な事例に一緒にトライしていければと思います。KPI設計・分析、プランニングなどについてもっと詳しく知りたい方や単発案件のご相談もお気軽にお問い合わせください。
▼サービスサイト
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