エブリーでは昨年末より、「ダイバーシティ&インクルージョン」という組織横断プロジェクトを推進しています。なぜこのプロジェクトを推進しているのか、取締役の菅原、執行役員の山本に聞いてみました。
菅原 千遥
取締役 執行役員 DELISH KITCHEN カンパニー長
2012年慶應義塾大学を卒業後、グリー株式会社に入社。
事業責任者として女性向けネイティブゲームに従事し、その経験を活かし戦略部門にて子会社や投資先会社の事業管理基盤構築を推進。その後、新規事業の立ち上げを主導。
2015年9月、株式会社エブリーを共同創業。レシピ動画メディア『DELISH KITCHEN』を立ち上げ、2018年に執行役員に就任。2020年、取締役 執行役員に就任。2021年2月より、厚生労働省「自然に健康になれる持続可能な食環境づくりの推進に向けた検討会」に構成員として参画。
山本 隆三
執行役員 CFO コーポレート本部長
慶應義塾大学修士課程修了後、投資銀行においてM&Aアドバイザリー業務、資金調達業務、IR支援業務に従事。
2015年に株式会社メタップスに入社し、経営企画部としてIPO準備の最終段階から関わり、上場後はIR体制の構築、M&A、資金調達、管理会計、事業計画立案業務等を主導。
2017年に株式会社エブリー入社。2018年に執行役員CFOに就任、コーポレート本部長として人事総務部、経営企画部を管掌。
「料理」も「子育て」も、みんなで参画する社会へ
ー「ダイバーシティ&インクルージョン」の横断プロジェクトについて、まずはプロジェクトがスタートした背景を教えてください。
菅原:エブリーは現在創業6年目で300名弱の方が働く会社です。No.1のメディア企業を目指して多種多様なユーザーに向けてサービスを作っています。
特に当社運営のメディアは、家庭での「料理」「子育て」という領域でサービス展開をしています。家での料理と子育ては、これまでの日本だと「女性が負担するもの」と考えられることが多かったものの、徐々に考え方が変わってきて、男性の家事への参画は増えてきているといわれています。しかし実際にユーザーデータを調べてみると、当社メディアのサービスはほとんどが女性ユーザーで、男性ユーザーの割合は少ないというのが現状です。
「もっとユーザーに喜んでいただけるサービスを作るためにはどうすればいいのか」、突き詰めていくと「料理」「子育て」という行動自体の役割分散をさせていく、社会に対する働きかけも行っていくのが必要なのではないかと思っています。家庭での料理、子育てに男性の参画を増やすことで、男女共同参画社会の実現にも貢献していきたいと考えています。
山本:そのような「社会に対する働きかけ」をサービス側が行うこともそうですが、まずはエブリーとして社内のメンバー全員がフェアに働ける環境であることも重要だと思っています。そのような会社であるために平等性の観点で、性別だけではなく、性的指向、障がいの有無、人種や国籍など様々な観点に気をつけていく必要があると考えています。
現在のエブリーには取締役会、カンパニー(本部)、部、グループ、チームといった組織体があるのですが、それぞれの組織体においてすべてのメンバーが平等にチャンスを与えられ、フェアに評価されるような環境を目指しています。差別がないのはもちろんのこと、不平等な状況が発生していないか、あらゆる視点でギャップを見つけていけるようにしています。全てのメンバーにとってフェアな環境であることを「目指し続ける」ことが大事だと考えていて、そんな会社にしていきたいですね。
そこで現在の組織にどんな課題があるのかを知るために、まずは組織がどんな状態なのかを正しく把握することが大事だということで、様々な数値を可視化してみました。今回は、エブリーの「現在の組織の状態」を可視化したものを公開していきたいと思います。
エブリーの様々な数値を公開!
山本:まずはエブリーの全体像ですが、平均年齢は31.6歳、従業員数は292名、そして男女比が47:53です。年代別の人数分布を見ていくと20代・30代が圧倒的に多く、全体の9割以上を占めています。特に、25歳〜34歳までの年代は全体の67%で、ボリュームゾーンとなっていますね。
山本:年代別に男女比率を見てみると、25-29歳の年代では女性が多く、35歳以上の各年代では男性の割合が多くなっています。年代によって多少の偏りはありますが、全体でみると47:53とバランスが良いと考えています。
山本:職種別の比率も公開します。最多カテゴリは全体の4割を占める「コンテンツ」で、『DELISH KITCHEN』、『MAMADAYS』、『TIMELINE』それぞれの動画コンテンツの制作に携わるメンバーを指しています。高い品質のプロコンテンツは私たちの事業の根幹であり、強みの部分です。例えば、レシピ動画を配信している『DELISH KITCHEN』では、管理栄養士などの資格を持つたくさんのフードスタイリストが「食のプロフェッショナル」としてコンテンツの制作に携わっています。
「コンテンツ」に次いで、プロダクトマネージャーやエンジニア、デザイナーなどプロダクトやサービスの開発に携わっている「サービス」が多くなっています。さらに社外のクライアントやカスタマー対応を行う「ビジネス」、法務や人事などの「コーポレート」という順番で比率が大きくなっています。
山本:続いて、役職ごとの男女比率です。全社的な割合に比べると女性比率は下がりますが、厚生労働省の統計データから、同規模の企業平均と比較をすると役職者の女性比率は高い数値となっていることがわかります。
(出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r01/02.pdf)
従業員の各家庭でも、「男女共同参画」ができるサポートを
ー今回、なぜこのような数値公開に踏み切ったのですか?
山本:男女共同参画社会の実現が最終的なゴールなので、そういった社会を目指していくために企業各社のノウハウや道筋をシェアし合っていくことが大切だと思ったからです。このような企業内の組織データを公開している企業は現時点で多くはないものの増えてきている印象ですし、多くの企業が情報をシェアし合って、議論が活発になるといいなと考えているので、まずは自分たちからということで、公開することにしました。
日本でも政府が男女共同参画社会の後押しをしていて、「女性の管理職比率を2020年までに30%にする」といった目標を掲げていました。全体では目標数値に到達することなく終わったそうですが、エブリーでは女性の管理職比率34%と、この目標数値を達成することができています。
ー私も意外でした。なぜエブリーでは、女性の管理職比率が34%と高い水準なのでしょうか?
山本:エブリーが運営している『DELISH KITCHEN』などのメディアは多くの女性ユーザーを抱えていますので、サービスを身近に感じて入社を決断してくれる女性が多いのと、もともと男女比率が均衡していた会社組織の中で採用活動や評価の局面において性別が意識されることがなかったということが起因していると思います。
とはいえ、役員の女性比率は18%とまだまだバランスが悪いと感じています。比率という数値にこだわるわけではありませんが、様々な人がフェアに活躍できるよう、更なる改善を進めていきたいです。
また、出産・子育てといったライフステージの変化や、ご自身やご家族のご病気など、誰にでも起こり得る状況の変化に対しても不平等が起きないようにする必要があります。ケースバイケースで事情は様々だと思いますが、どうしても業務時間が確保できない、長時間仕事から離れないといけないといったタイミングがあったとしても、また当たり前に戻ってこられて今まで通り活躍できるような会社にしていきたいです。
菅原:例えば、こちらは育児・子育てに対するエブリー従業員の状況をまとめたものです。まずリーダー職以上のメンバーのうち、パパ・ママ比率(お子さんがいらっしゃる比率)は42%でした。過半数には満たないですが、多くの方が育児・子育てに励みながらエブリーの会社を引っ張るポジションを担っています。
また育休取得率も算出したところ、2018年から現在までのうち、女性の産休・育休取得件数は9件で、取得率は100%でした。一方で男性の育休取得数は2018年から現在までに2件で、取得率は16%です。かなり差がある状況ですので、男性メンバーの取得率も上げていただけるように何か施策を考えていきたいです。
ー今後どのように「ダイバーシティ&インクルージョン」のプロジェクトを進めていく予定ですか?
山本:今回算出した数値を参考にしながら、順に課題に取り組んでいきたいと思います。まずはボリュームゾーンである2-30代の女性が接する機会の多い、出産・育児に関連する制度は緊急度高く取り組むことになりそうです。
あとは制度を作るだけではなく、制度を使いやすい雰囲気を作ることも非常に大事だと考えていて、エブリーでは様々な働き方を支援するため、「every.one」という社内報にて様々なメンバーのインタビュー記事を公開しています。社内のメンバー全員がアクセスできる場所で、様々な働き方を紹介することで、多様性への理解と浸透を促進していくことが目的です。「every.one」ではすでに産休・育休制度について取り上げているのですが、これまでのインタビュー対象が女性ばかりだったので、男性にもインタビューをして男性の育休取得率を向上させていきたいと思います。
菅原:また2020年の春からはコアタイムを設定したフレックス制度に変更をし、より多様な働き方をしていただけるような勤務体制も整えてられてきているかなと思っています。
家庭によって事情も異なりますので一概には言えないことも多いですが、女性のリプロダクティブ・ヘルス・ライツを認めていき、どんな選択にもそっと寄り添えるような制度を「ダイバーシティ&インクルージョン」の横断プロジェクトを通して作っていきたいです。今後詳細がまとまり次第、こちらでも発信できればと思います。
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