アドバイザリーボードメンバーの堤ちはる 先生にご登壇いただきました!〜子どもの「食」を考える〜
アドバイザリーボードのメンバーとして、エブリーで『DELISH KITCHEN』のレシピ品質ルール、および『MAMADAYS』の食材リストの監修を務める相模女子大学教授 堤ちはる先生に、子どもの「食」についてお話しいただきました。
堤ちはる 先生
相模女子大学栄養科学部 健康栄養学科 教授、同大学大学院 栄養科学研究科 教授併任
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了
東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了
保健学博士、管理栄養士
青葉学園短期大学専任講師、助教授、その間米国コロンビア大学医学部留学、
恩賜財団母子愛育会 日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部 栄養担当部長を経て、2014 年より、相模女子大学栄養科学部健康栄養学科教授、同大学大学院栄養科学研究科教授兼務
専門は母子栄養学、保健栄養学
青山学院大学、神奈川県立保健福祉大学大学院、神戸大学、東京慈恵会医科大学、日本社会事業大学非常勤講師
はじめに
エブリーは社会に信頼されるメディアづくりを使命として、コンテンツのチェックやフロー、ルールを外部の有識者とともに整備するなどのアドバイザリーボード活動を積極的に実施しています。また、その中で関わりのある有識者の方をオフィスへお招きし、社内講演会を開くことで実際の業務に携わるメンバー一人ひとりの幅広いインプットを支援しています。昨年の吉村泰典先生による講演に続き、今回は第2弾として、相模女子大学で教授を務める堤ちはる先生に、子どもの「食」についてお話しいただきました。
堤ちはる先生は母子栄養学・保健栄養学の専門で、弊社のアドバイザリーボートでは食事業を担当されています。『DELISH KITCHEN』のレシピ品質ルールや『MAMADAYS』の食材リストの監修を務めるなど、食に関わるコンテンツ品質の担保に無くてはならない存在です。
講演内容|子どもの栄養学
講演では、健康的に食生活を楽しむための課題要素として、子どもの偏食・さまざまな「こ食」・朝食欠食の3つについて取り上げて、それらの背景や影響、そして具体的な対策までを解説いただきました。
【子どもの偏食】
堤:まずは偏食のとらえ方から。例えば「ピーマンなど特定の食品が苦手で食べられなくても、ほうれん草やブロッコリーなど、同じような栄養素を含む他の食品を食べることができれば、問題ないのではないか」と思われるかもしれません。「苦手なものは避けて楽しく食事をした方がよいのではないか」などの意見もあると思います。しかし、乳幼児期の好き嫌いは食べ慣れないことによる本能的な「新奇性恐怖」の可能性があるので、その食品に慣れ親しむ機会を作り続けることが重要です。
調理方法を工夫したり励ましたりしながら、食べることができたら褒めて達成感や自信を育み、経験値を上げていくことも食育の一環であると考えています。好き嫌いの具体的な対応としては、好きなキャラクターに例えて口に運んだり、2つに分けてどちらがよいかを選ばせたりする方法があります。現場でも実際に一定の効果があった方法ですので、もし困っている方がいらしたら実践してみてはいかがでしょうか。
【避けたい7つの「こ食」】
堤:食事はエネルギーや栄養素の補給の場であると同時に、家族や友人等とのコミュニケーションの場、そして正しいマナーを身に付ける教育の場でもあります。
1人で食べる「孤食」、複数で食べていてもそれぞれで食べているものが違う「個食」、子どもだけで食べる「子食」をはじめとした7つの「こ食」では、栄養バランスが偏ったりマナーが身につかない、思いやりの心が育ちにくいといった影響が出る可能性があります。
みんなで同じ食事を囲んで食べることで、社会と自分との関係を知り、具体的な状況の中で思いやりの心やマナーを学ぶことができると考えています。
【朝食欠食の影響】
最後に、朝食をとることの重要性を脳・神経系へのエネルギー補給の観点、食事時刻による食事誘発性熱産生の観点、食事回数の観点の3つからお話しいただきました。そして健康的に食生活を楽しむには、「何を、どれだけ食べるか(栄養素やエネルギー(カロリー))」とともに「どのように食べるか」が重要であると締めくくりました。
メディアとしての情報発信にいかすには?
講演後の質疑応答の時間では、「食」「育児」に関わるサービス運営者として、また1人の親としての目線で多くの質問が上がりました。
Q. 食育において『DELISH KITCHEN』ができることは、忙しい親御さんが料理を作るのをサポートしていくことかなと思っています。実際に働きながら子育てをしている方からの声としてはどんな内容のものがありますか?
堤:以前、「1歳未満の子供の母親に何が知りたいですか?」という質問をしたら、「母親が片手で食べられる料理が知りたい」ということでした。子育てがどれだけ大変で切羽詰まった状況なのか、ということがよくわかりますね。最近では「時短」などのキーワードが人気を集めています。たとえば冷凍食品やお惣菜などの市販品の活用により「手抜き」ではなく「手間抜き」ができるお料理レシピの提案もできるとよいですね。
本来「食」は、食べる人だけではなくて作る人にとってもうれしい・楽しいものだと思います。そういったウェーブを積極的に広げていってもらえたらと思います。
Q. 個人の好みが出てきた子どもに対しては、偏食をなおすことよりも食事を楽しむことを優先した方がいいのでしょうか?どのように向き合うべきですか?
堤:子ども自身の嗜好性が出てきた場合でも、最初から嫌いな食べ物を避けるのではなくて、調理方法を工夫したりして試す機会を提供し続けることが大切です。そうやって経験を重ねていくことで、いつの間にか克服することができることがあります。子どもの頃嫌いだったものが、成長するにつれていつの間にか克服できていることはよくありますね。決して無理強いはせずに機会を提供し続けて、実際に食べるかどうかの選択は子どもの意志に委ねるとよいと思います。
Q. 朝食の重要性は理解できたのですが、ご飯・味噌汁・魚などの副菜といった献立のイメージがあり、お客さまへ提案するにしてもハードルが高いと感じます。忙しくても簡単に用意できる、食べるコツがあれば教えてほしいと思います。
堤:パンやオートミールなど基本の食材を決めておいて、味付けやトッピングでパターン化するのはいかがでしょうか。ロールパンだったら、ソーセージを挟む日、ハムとチーズの日、卵を一緒に食べる日などなどパターンをいくつか作って回していくという方法でもよいです。
今まで朝食をとっていない家庭では、栄養や献立を考えたりする前の段階として「とにかく朝食を食べる」などできるところから始めていくことが大事です。最初はパン1つだけでもよいから食べて、次にチーズを乗せてみたり、卵を乗せてみたりして、少しずつバリエーションを増やしていければよいと思います。
おわりに
今回の講演には、オンラインとオフラインを含めて総勢108名のメンバーが参加しました。実施後のアンケートでは「食に関する理解が深まった」、「考えるきっかけになった」などの声が多く寄せられました。
・「新奇性恐怖」についてのお話が特に印象に強く、自分が子どもの頃に食べなかった、嫌いだった食べ物は大体がこの話に該当するものかと思いました。朝食欠食の話もそうですが、食べる習慣が成長や思考などに大きく影響を与える重要な要素という説明が非常に分かりやすく、理解することができました。 ・「こ食」に関するお話は特に興味深く、同じ食卓を囲んでいても違うものを食べる「個食」の概念はあまりなじみがなかったので、面白かったです。 ・食事のとり方で社会性や思いやりの心が身につくというお話はなるほど、と目からウロコでした。なんとなくだめなんだろうなと思っていたことを、具体的かつ納得感のある理由で教えていただいて、大変勉強になりました。 |
具体的なシーンのお話を交えてお話ししてくださったので、自身の子ども時代を振り返ったり、現代の食事環境を考えたり、子どもがいらっしゃる方の生活や食事パターンを考えたりと、とても身近な課題として考えることができました。この度得た知識や機会をいかして、業務やサービスを通してお客さまへ届けていければと思います。
貴重なお話をありがとうございました!