〜楽しく食べて選食力を育む〜 農林水産省 鶴岡様による社内講演会を実施しました。

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現代社会において、食育は単なる「食べ方の教育」に留まらず、持続可能な食生活を築くための基盤となっています。農林水産省による講演会では、食を「楽しむ」ことと「選ぶ力」=「選食力」を育むことの重要性についてお話しいただきました。

農林水産省 消費・安全局 消費者行政・食育課
鶴岡 佳則 様

嗅覚から感じて、考えて、言葉にする食育ワークショップ

講演ではまず、視覚に頼らずに嗅覚を通じて食材を感じることの大切さを感じることができるワークショップが行われました。

鶴岡:五感とは、視覚、味覚、聴覚、触覚、嗅覚のことです。現代社会では、食事の多くが視覚に頼るものとなっており、食材の香りや触感を感じる機会が少なくなっています。

嗅覚は脳の海馬に直結していますので、嗅覚を刺激することが食の安全と生命を守る感覚を研ぎ澄ますことに繋がり、健康的な生活の第一歩につながります。






子どもたちだけでなく、大人にも重要な食育の推進

鶴岡:農林水産省は、食の生産から流通、消費まで全ての分野を担っている省庁になります。全国に出先機関を持ち、その中で基本法や基本計画など様々な施策を政府全体の食育として推進しています。他にも自給率や地産地消などの取り組みの中でも食育を推進しています。

もちろん他の省庁でも食育に関する取り組みがなされていて、例えば、経済産業省が取り組む健康経営は、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に取り組むことで、業績向上や組織の価値向上につながるとして推進されています。健康経営銘柄などとして、投資家にも紹介されるなど、食育は子どもだけではなく大人にとっても重要なテーマです。










鶴岡:現在取り組んでいる「第4次食育推進基本計画」ですが、重点事項が3つあります。まず文部科学省、厚生労働省を中心とした「生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進」で、「健康日本21」や、「早寝早起き運動」などです。そこと連携して農林水産省が中心となって行っているのが「持続可能な食を支える食育の推進」です。加えて、コロナ禍を経て「新たな日常やデジタル化に対応した食育」を推進しているということになります。

さらに現代では、SDGsといかに連携させるかクロスさせるかがとても求められています。世界規模で環境に負荷をかけない農業の推進が図られていて、日本においても将来の持続可能な食糧システムを作ることを目指して「みどりの食料システム戦略」を公表して取り組んでいます。 










鶴岡:基本計画では数値目標を掲げていますが、中でも若い世代(20-30代)の「朝食欠食」の増加(5*)、地産地消などの意識の低下(18,19*)、和食や家庭料理の継承も意識してできているのは国民の半分以下(21*)という現状を受け、農林水産省は成人向けの食育に力を入れています。

※()内は下記、参照資料の目標値の番号を指します。
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kaigi/attach/pdf/r05_02-5.pdf


日本型食生活で食料自給率がUP?!食べることで実践できる食育

では、どうしたらこのような課題を解決できるのか。日常の中ですぐに実践できる食育についてお話しいただきました。

鶴岡:実は我々が44%しか継承できていない日本の食文化は、地球環境にも自分自身にも優しい食生活です。
動物性のものを比較的摂っている国は、実はものすごく温室効果ガスの排出をしていて、環境に負荷をかける食事になっています。しかしながら、伝統的な食生活の中には、健康的で持続可能な食生活の重要なモデルとなり得るものが数多くあるとして、日本の伝統的な食生活もその1つとして世界で例示されています。

また、日本型の食生活は私たちの健康にも食料自給率にも貢献します。
ご飯を中心に主菜と副菜などバランスよく食べようとしているのが日本型の食生活の特徴です。これを実践すると、まず脂質の摂取割合が理想値の22%になります。天丼を食べてもいいんです!

さらに、現在の食料自給率は38%ですが、1日3度ご飯を食べることによって、約2倍の64%まで向上させることができます。食料自給率についても様々な施策がなされていますが、日本の皆さんが毎日一口ご飯を食べるだけで1%上昇させることができます。










鶴岡:他にも、皮剥きなどの過剰除去や食べ残し、賞味期限切れなどによる廃棄など家庭からも「食品ロス」の削減ができ、これによっても食料自給率は改善します。

また、「地産地消」を意識して、例えば、アメリカ産小麦の食パン2枚を地元産(20km)のお米茶碗1杯に変えるだけで36.8gのCO2排出を減らせます。家族4人が1日3杯ずつ食べると1年間で約160kgのCO2排出を減らすことが可能なのです。

国の食料自給率を上げることや地球環境に負荷をかけないようにするには、旬のものや地元のもの、そしてご飯を食べることが効果的です。ぜひこれを機会に毎日の生活の中で日本型食生活を実践していただけたら嬉しいです。


食卓にもっと魚料理を!美味しい魚を選ぶための豆知識も

最後に日本型の食生活に欠かせない魚について、健康面のメリットからつい誰かに話したくなるような豆知識まで教えていただきました。

鶴岡:魚にはタンパク質、DHA、EPA、カルシウムなどの栄養素が豊富に含まれており、これらはサプリメントで摂取するよりも、魚を食べることで手軽に補うことができます。例えば、サンマやアジなど、一般的な魚の摂取で健康維持に必要な栄養素が十分得られます。










鶴岡:また、魚にも「旬」があり、その時期に収穫される魚は栄養価や美味しさが最大化されるとされています。

例えば、初ガツオと戻りガツオ、旬はどっちなのかご存知ですか?
ほとんどの魚は年1回最も味が良くなる時期があり、多くの場合、旬は活発にエサを食べる産卵期前と言われ、脂肪やグリコーゲンを蓄え、アミノ酸などの旨味成分も増加します。こうしたことから、一番美味しいのは戻りガツオということになりますが、しかしながら、日本は南北に⻑く、季節、地域、時代、文化、歴史などによって様々な旬があります。実は、初ガツオは江戸っ子の見栄が作った旬の文化です。

他にも、一年中目にするマグロにも旬はあります。真冬の「クロマグロ」や「メバチマグロ」が特に有名ですが、春はキハダマグロ、夏はミナミマグロ、秋から冬はメバチマグロが旬で、この旬を無視してブランド(産地・商品名)で判断してはいけません!

また、店頭などで選ぶ際には、柵の状態に「縦」に筋が入っているもの(切り身の状態では横)を選ぶのがポイントです。実はスーパーの鮮魚コーナーやお寿司コーナーにも切り身になった時に横に筋が入っているものが結構あったりして、そこはきっとマグロをはじめ、魚に力を入れているんだなと、美味しいお店を見分けるひとつの目安になります。










鶴岡:そしてこれからの秋の時期に旬になるのが、サケやサンマです。
サケの切り身を選ぶ基準は、皮目のコントラストで、黒い部分と白い部分がはっきりしてるものが美味しいとされています。

サンマに関しては、大きさや脂ののり具合が味に直結しますので、銀色に輝いていて大型のもの、お腹ではなく背中が丸いもの、そしてくちばしが黄色いものなどを選ぶのがポイントです。


さいごに

鶴岡:食育を実践することで大切なことは、できることを行動として続けることです。

既存の一汁三菜にとらわれる必要はありませんが、日頃からバランスのよい日本型の食生活を意識して、旬や地元の食材を選び、適切な調理方法で無駄なく美味しく消費することを心がけていただけたら嬉しいです。
結果として、健康を維持するだけでなく、環境負荷を軽減する取り組みにも繋がり、持続可能な食生活を実現することができます。












講演実施後のアンケートでは、食を楽しむこと、そして選食力を磨くことで、健康的で持続可能な食生活を築いていける点について多くの学びの声が寄せられました。

・講演を通じて、食べること自体を楽しむこと、そして自ら選び取る力を育むことの大切さを学ぶことができました。

・日常の食事を少し見直すだけで貢献できることがたくさんある、旬の食材を見分けたり、食べることの大切さを感じました。


エブリーはこれからも、「明るい変化の積み重なる暮らしを、誰にでも。」のパーパス実現に向けて、日々の数ある場面と、そこに伴う気持ちを想像し、人が毎日を歩む、その道のりのパートナーとして尽力してまいります。

▼エブリーの目指す世界
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