エブリーでは、社会課題への解像度を高め、自社サービスを通じてどのように社会に貢献できるかを考えるため、定期的に省庁の方をお招きした講演会を実施しています。
今回は、こども家庭庁 成育局 母子保健課のお二人をお招きし、「母子保健施策の動向」をテーマにご講演いただきました。日本の母子保健の歩み、妊娠・出産・産後を支える支援体制の現状、そして近年注目が高まる「プレコンセプションケア(妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行う取り組み)」まで、幅広い内容をお話しいただきました。本記事ではその内容をダイジェストでお届けします。

登壇者紹介
こども家庭庁 成育局 母子保健推進官
高澤 航様
こども家庭庁 成育局 母子保健課 企画調整係主査
大泉 和渡様
こども家庭庁とは
高澤様:こども家庭庁のスローガンは「こどもまんなか」。2023年4月に発足した同庁は、こども・若者が置かれた環境にかかわらずウェルビーイングで生活を送れる「こどもまんなか社会」の実現をめざす、政府のこども政策の司令塔的な組織です。
これまで複数の省庁にまたがっていた子どもに関する政策(保育、母子保健、社会的養育、虐待防止対策など)を一体的に推進するとともに、省庁の縦割りを打破し、新しい政策課題にも横断的に取り組んでいます。

日本の母子保健行政のあゆみ
大泉様:日本の母子保健行政の歩みは古く、1942年には「妊産婦手帳制度(現・母子健康手帳)」が開始されています。当時の背景には、高い乳児死亡率・妊産婦死亡率、そして妊婦の流産・早産・死産という深刻な課題がありました。
その後1965年に母子保健法が制定され、妊産婦や乳幼児への健康診査・保健指導の体制が整えられてきました。長年にわたる取り組みの積み重ねにより、日本の妊産婦死亡率・乳児死亡率は戦後急速に改善し、今では世界有数の低率国となっています。
2021年時点の妊産婦死亡率は出生10万あたり3.4、乳児死亡率も2023年時点で出生千あたり1.8と、国際比較でトップクラスの水準を誇ります。
一方で社会の変化も大きく、晩婚化・晩産化が進み、第1子出生時の母の平均年齢は2024年に29.8歳と、1975年の24.7歳から大きく上昇しました。核家族化や育児の孤立化など、妊産婦を取り巻く環境は時代とともに変化し続けており、それに合わせて支援のあり方もアップデートされています。

妊娠から子育てまで、切れ目のない支援体制
大泉様:こども家庭センター(母子保健機能)を拠点として、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援の体制が整備されています。主な支援をご紹介します。
・妊婦健診
妊婦に対して14回程度の健診費用が公費で助成されています。全国すべての市区町村で実施されており、血液検査など医学的に必要な検査が幅広くカバーされています。今後、妊婦健診の経済的負担を軽減するための環境の整備や、妊婦が納得感を持って選択できる環境を整備するために、医療機関の妊婦健診の内容・費用等の情報の見える化を進めていきたいと考えています。
・産婦健診
出産直後の産後2週間・産後1か月など、身体的機能の回復や授乳状況、精神状態の把握を目的とした健診です。支援が必要な産婦を早期に把握し、産後ケアへとつなぐ重要な役割も担っています。
・産前・産後サポート事業
妊娠・出産や子育てに関する悩みを抱える妊産婦等に対し、助産師等の専門家や子育て経験者・シニア世代の「話し相手」が相談に応じる事業です。身近に相談できる者がいないなど妊産婦等のソーシャル・キャピタルの役割を担っています。
・産後ケア事業
出産後1年以内の母子に対し、宿泊型・デイサービス(通所)型・アウトリーチ(居宅訪問)型の3形態で、助産師等が心身のケアや育児サポートを行います。2019年度に母子保健法の改正で法制化(市町村の努力義務として規定)され、2023年度には産後ケアを必要とするすべての人が対象のユニバーサルなサービスであることを明確化し、全国展開が進んでいます。

生まれてから就学前まで——乳幼児健診の体制整備
大泉様:母子保健法では1歳6か月児健診と3歳児健診が市町村の義務として定められており、受診率はいずれも96%前後と高い水準を維持しています。
さらに近年は、「1か月児健診」と「5歳児健診」の全国展開にも取り組んでいます。1か月児健診では出産直後の身体疾患のスクリーニングや育児の相談等を行っています。5歳児健診では発達状況の評価や専門相談等を行い、就学前に必要なサポートにつなげることができるよう、地域における必要な支援体制の整備を行うこととしています。令和7年度補正予算では28億円が確保され、早期の全国展開をめざしています。
また新生児マススクリーニング(先天性代謝異常等検査)は、放置すると知的障害などの症状をきたす疾患を生後早期に発見し、治療等につなげることを目的としており、すべての新生児を対象に実施されています。
プレコンセプションケア——妊娠前からはじめる、自分のための健康管理
大泉様:後半では、近年特に力を入れて取り組んでいる「プレコンセプションケア(通称:プレコン)」についてお話しします。
現在、こども家庭庁が特に力を入れているのが「プレコンセプションケア」です。こども家庭庁では「性別を問わず、適切な時期に性と健康に関する正しい知識を持ち、将来の妊娠・出産を含めたライフデザインや健康管理を行う」概念としています。

大泉様:プレコンセプションケアは女性だけの話ではありません。男性の年齢上昇とともに累積妊娠率が低下することや、たばこ・飲酒・睡眠不足・肥満や生活習慣病なども、将来子どもを授かるための身体づくりに影響する可能性があると報告されています。
また、仕事と不妊治療の両立を経験した人のうち、働いていた人の約3割が仕事か不妊治療のどちらかを諦めているというデータもあります。
性別を問わず、性や健康に関する情報を知らないために、後悔することのないよう、こども家庭庁では「プレコンセプションケア推進5か年計画」を策定し、2030年5月までに「プレコンサポーター」を5万人以上養成することをめざしています。
プレコンサポーターはeラーニング形式の養成講座を修了した後、企業・自治体・教育機関等でのセミナーや出前講座などを通じて、身近な場から知識の普及を担います。
また、普及啓発のためのウェブサイト「はじめよう プレコンセプションケア」も2025年9月に開設されました。

『トモニテ』に期待すること
最後に、私たちが運営する『トモニテ』や『デリッシュキッチン』といったメディアの役割について、メッセージをいただきました。
大泉様:行政が発信する情報は、どうしても硬くなりがちです。また、「こどもまんなか実行計画」には約400もの施策が含まれていますが、本当に困っている人に適切なタイミングで情報を届けることが難しいという課題があります。しかし、エブリーさんのようなメディアなら、日常の文脈の中で、ユーザーの心に届く言葉で情報を伝えられます。
例えば、料理のレシピを探している時に「将来のために今摂っておきたい栄養素」としてプレコンの話が出てくる。育児の悩みを探している時に、ふと「自分の健康」を振り返るきっかけがある。そうした「日常の中の接点」こそが、社会の意識を変える大きな鍵になると感じています。行政としてもそうした環境整備や民間企業との連携を進めていきたいと考えています。

講演実施後のアンケートでは、多くの学びの声が寄せられました。
・プレコンに関して国が動いてくれているということが改めて実感できた会だった。
・子どもを育てる身としても、こども家庭庁さんの考え方や中の人を知れる良い機会だった。
・400ほどの政策があるがそれらの認知を広げて制度活用してもらうのが課題、というお話をされていて、自分たち生活者側もそれらの情報を取りに行く努力や姿勢が必要だなと感じた。
・プレコンセプションケアという新しい考え方について認識することができた。センシティブに扱われがちではありつつ大事な要素について、どのように向き合われているのかを知ることができた。
エブリーでは、妊娠・育児期の生活者に寄り添うサービス「トモニテ」を展開しています。今回の講演は、日々の業務の先にある「一人ひとりの日常」をあらためて想像し、社会との接続を感じる機会となりました。
エブリーはこれからも、「明るい変化の積み重なる暮らしを、誰にでも。」のパーパス実現に向けて、子育て世代の毎日をよりあたたかく支えるためのサービスづくりに取り組んでまいります。
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