アドバイザリーボードメンバーの堤ちはる 先生に、子どもの食についての疑問にお答えいただきました。

アイキャッチ
目次

アドバイザリーボードのメンバーとして、エブリーで『DELISH KITCHEN』のレシピ品質ルール、および『トモニテ』の食材リストの監修を務める相模女子大学特任教授 堤ちはる先生による第2回目の社内講演会を実施しました。今回は事前に社内で取ったアンケートを元に、子どもの「食」についてお話しいただきました。


堤ちはる 先生
相模女子大学栄養科学部 健康栄養学科 特任教授
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了
東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了
保健学博士、管理栄養士
青葉学園短期大学専任講師、助教授、その間米国コロンビア大学医学部留学、
恩賜財団母子愛育会 日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部 栄養担当部長を経て、2014 年より、相模女子大学栄養科学部健康栄養学科教授、同大学大学院栄養科学研究科教授兼務。2024年より、同大学特任教授
専門は母子栄養学、保健栄養学
青山学院大学、神奈川県立保健福祉大学大学院、神戸大学、東京慈恵会医科大学、日本社会事業大学非常勤講師


はじめに

 エブリーは社会に信頼されるメディアづくりを使命として、コンテンツのチェックやフロー、ルールを外部の有識者とともに整備するなどのアドバイザリーボード活動を積極的に実施しています。また、その中で関わりのある有識者の方をオフィスへお招きし、社内講演会を開くことで実際の業務に携わるメンバー一人ひとりの幅広いインプットを支援しています。

 相模女子大学で特任教授を務める堤ちはる先生は母子栄養学・保健栄養学の専門で、『DELISH KITCHEN』のレシピ品質ルールや『トモニテ』の食材リストの監修を務めるなど、食に関わるコンテンツ品質の担保になくてはならない存在です。
そんな堤先生に、事前に社内で集めた子どもの食にまつわる疑問や悩みにお答えいただきました。

食事の場を共にすることが、子どものイライラ軽減に繋がる

Q. 食事を摂ることの重要性について教えてください。

堤:食事を摂ることは、①エネルギーや栄養素の補給、②家族や友人等とのコミュニケーションの場が得られる、③マナーを身に付ける教育の場となるという点で重要です。

 家族や友人等とのコミュニケーションの場としても食事は重要で、お子さんを対象にした調査では、「イライラする」状況と関係があることがわかっています。下の図にあるように、朝食、夕食を一人で食べる人は、家族そろって食べる人に比べて、「しばしばイライラする」と「時々イライラする」割合が増加しています。このように、家族や友人と共に食事をすることは、心の癒しの場ともなっているのです。

堤:マナーを身に付ける教育の場となる点に関して。お子さんに食事のマナーを教える時は、「そのとき、その場で」することがとても重要です。就学前に学習の場として食事のマナーを一度にまとめて教えることもありますが、食事をしているその場で教える方が、マナーを身に付けるには効果的です。

乳幼児期の鉄欠乏は後で補えない

Q. 子どもの年齢ごとの適切な食事量と、特に意識したい栄養があれば教えてください。

堤:図にあるように、栄養素摂取の推奨量やエネルギー目標量は年齢に比例しません。特に乳幼児期には、体重(kg)あたりで相当な量を必要としていることがおわかりいただけると思います。このように、体が小さいとはいえ、子どもの食事は決して疎かにできないのです。

堤:意識したい栄養素は、たんぱく質、カルシウム、鉄の3つです。
 特に鉄について言及したいのですが、乳幼児期の鉄欠乏は貧血を発症し、貧血により体重増加不良、身長の伸びの障害を引き起こすだけでなく、脳の発達・機能にも影響します。白質のミエリン形成、線条体のモノアミン代謝、海馬の機能に影響を与え、それらの異常はその後に鉄が補充されても成人まで持続すると言われています。(※1)
(※1) Beard JL:Why iron deficiency is important in infant development? J Nutr 138:2534-2536,2008

 鉄は吸収率が低い上に、推奨量を摂ろうとすると子どもが物理的に食べられないくらい多い量になってしまったり、その量を摂取するとビタミンAの耐用上限量を超えてしまったりと、摂取するのが難しい栄養素です。そんななかで意外とあさりは鉄が多く含まれています。そこで、クラムチャウダーやスパゲッティなど、様々な料理の食材として利用するのがおすすめです。また離乳期であれば、フォローアップミルクなどを調理素材として利用して鉄を補うのもよい方法かと思います。

手づかみ食べは、自分で食べる意欲と、目、手、口の協調動作に繋がる

Q. よく噛まずに飲みこんでしまいます。噛まないことによる懸念と、どうやって噛むように伝えればいいのか教えてください。

堤:⾷べる機能の発達⽀援については、手づかみ食べをおすすめします。保護者としては、食事に時間がかかる、周りが汚れて片付けが大変など、ストレスを感じることもありますが、⼿づかみ⾷べは積極的にさせたい⾏動で、その理由は2つあります。

 1つ目の理由は、⺟乳やミルクを「飲ませてもらう」、離乳⾷を「⾷べさせてもらう」受け⾝の状態から、自分で食べる意欲を育てることができるからです。

 2つ目の理由は、目、手、口の協調動作を育てることができるからです。手づかみすると、温度、固さ、触感、重量がわかります。そのため、一口でかじり取る適量を判断し、前歯でかじり取る固さにより、咀嚼の強さのスイッチを入れることができます。

 また、よく噛まないで丸飲みをしてしまうお子さんへの対応としては、一口大の食べ物は与えず、前⻭でかじり取れる固さ、⼤きさの⾷べ物を与えます。詰め込み⾷べをする⼦どもには、スティック状ではなく⼝の幅より⻑い⾷べ物を与えます。手に持ちやすいようにとスティック状にすることが多いですが、口の幅より長い食べ物を与えることで、詰め込みがしにくくなるからです。

誤嚥や窒息を防ぐ、りんごの与え方

Q. 誤嚥や窒息が心配な食材について教えてください。

堤:窒息事故が多く発生しているりんごについてお話しできればと思います。

 すりおろしてあっても窒息事故が起きていて、疑問に感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。その原因は、赤ちゃん特有の吸啜(きゅうてつ)反射にあります。
 離乳開始前は、口の中に入ってきた乳首を舌で包み込んで引き込み、上顎のくぼみに押し付けながら舌の波動様の動きを引き出す吸啜反射により乳汁を吸っています。この反射は、生後5〜7か月頃に消失しますが、離乳開始時期の生後5、6か月頃は、まだこの吸啜反射が残っていることもあります。そのためすりおろしりんごをあげたときに、吸啜反射から汁だけを吸ってしまうことがあるのです。すりおろしたりんごは口に残りやすく、液体と固体が分離するものは食べにくいため、気道に入ってしまう可能性もあります。すりおろしりんごは、小さな塊が残らないように完全にすりおろし、与える前にはすりおろした中に、小さな塊が入っていないか確認することが必要です。離乳初期であれば、唾液と食べ物の口中での混ぜ合わせは困難であるため、液体と固体が分離するすりおろしりんごは、加熱してなめらかな状態にすることが勧められます。

情報に振り回されず、子どもに向き合うために

Q. いろいろな情報が出回っていてなにを信じればいいのかわからなくなる時があります。どのように情報と向き合えば良いでしょうか。

堤:SNSなどでいろいろな情報が溢れている世の中ですので、どれが正確な情報かを判断することが難しいこともあるかもしれません。信頼できる発信源から情報収集すること、時には専門家に相談してみることも視野に入れてみてください。
 また、子育て経験者の個人の感想・経験などが、自分の子どもに当てはまるとは限りません。自分の子どもの個性、周囲の環境に合わせて、情報を取捨選択することが重要であると思います。

おわりに

 講演実施後のアンケートでは、子育てしているかどうかに関わらず、勉強になった、それぞれの業務の中で講演内容を活かしていきたいといった声が寄せられました。

・なんとなく大事だと思っていたことについて、背景や詳細理由を知ることができて解像度が上がりました。特に手掴み食べにおける、前歯で噛むことや重さ・材質を感じることの重要性を理解できた点が良かったです。

・一口サイズにして出すとかえって丸飲みしてしまって危険、ということは初めて聞きました。確かに前歯で噛みちぎることでそのあとどう咀嚼するか判断している、とお聞きすると大いに納得です。

・手づかみ食べの利点など、「へえー!」と思う情報がたくさんあり勉強になりました。子育て経験はないですが、今後子供に接する機会があった際に役立つ知識がたくさんあり、『DELISH KITCHEN』のサービスに関わる一員としても知ることができてよかったです。また、実際に子育てしている社員からの質問内容からも、子育て中の親がどんなことに悩むのか知ることができ、業務に活かせそうだと感じました。

 エブリーはこれからも、「明るい変化の積み重なる暮らしを、誰にでも。」のパーパス実現に向けて、日々の数ある場面と、そこに伴う気持ちを想像し、人が毎日を歩む、その道のりのパートナーとして尽力していきます。

▼エブリーの目指す世界
https://corp.every.tv/mission

▼アドバイザリーボードについて
https://corp.every.tv/advisory_boards

関連記事