「デリッシュキッチン」は今、「レシピ動画メディア」から「AI料理アシスタント」への大きな変革期を迎えています。AI時代においてデザイン組織はどのように進化し、いかにして事業を推進しているのか。今回は、VP of Productの堀田さんと、プロダクトデザイナーの大村さんに、AI時代にエブリーが目指す組織の姿と、デザイナーに求めることを聞きました。「上流からUI設計まで、幅広くデザインに関わりたい」「AI時代の新しい体験づくりに挑戦したい」——そんなデザイナーのみなさんに読んでいただきたい記事です。
なお本記事は、デザインパートナーであるグッドパッチとの協働を振り返る連載の後編です。「AI料理アシスタント」への変革に向けて、両社がどんな取り組みを行っていたのかを語った前編は、グッドパッチブログで公開中です。あわせてご覧ください。
■Interviewee
・執行役員 VP of Product|堀田 敏史
2011年名古屋工業大学大学院を修了後、グリー株式会社に入社。エンジニアとしてソーシャルゲームの企画開発、新規事業領域で介護施設メディアの開発に従事。フリーランスを経て、2015年11月、アゲレ株式会社共同創業。2016年09月、株式会社エブリーに入社。2021年07月からはDELISH KITCHENカンパニー サービスグロース部 部長として、事業拡大を牵引。2023年07月 VP of Product、執行役員、MAMADAYS(現 トモニテ)カンパニーサービスグロース部部長に就任。
・デリッシュキッチンカンパニー プロダクトデザイナー|大村 博子
2023年にエブリーに入社。『ヘルシカ』のデザインをメインに担当しながら、『デリッシュキッチン』のデザイン品質管理、コーポレート領域のクリエイティブまで幅広く手がけている。
・株式会社グッドパッチ(ゲスト) UI/UXデザイナー |平尾 帆野佳
デザインカンパニー・グッドパッチのUI/UXデザイナー。今回のデリッシュキッチンとの1年間の協働で、デリッシュAIのUI/UXの改善検討、コーポレート領域のクリエイティブ制作を担当。
レシピ動画から、AI料理アシスタントへ。まだ答えのない体験をデザインする
─「デリッシュキッチン」はデザイナーから見てどんなプロダクトだと思いますか。
(大村)まず「食」という、毎日・誰にとっても身近なテーマを扱っているのが大きいです。生活と関わる頻度が高い分、ユーザーの悩みもニーズも本当に多種多様で、体験づくりに深さがあります。加えて、「デリッシュキッチン」はレシピを探すという単一の機能だけでなく、サービスの中に複数の領域があるため、デザイナーとして関われる幅がすごく広いです。
(堀田)デリッシュキッチンは、レシピサービス アプリ+ウェブ利用者数 国内No.1(※)を誇ります。毎日たくさんの方が使ってくださっているので、小さなUIの改善一つが、多くの人の食卓に影響する。その手応えは、このプロダクトならではだと思います。
(※)アプリの月間利用者数300万人以上かつウェブサイトでの国内における月間利用者数2,500万人以上の国内主要レシピサービス3社の月間利用者数(2025/10〜2026/4、スマホアプリ市場分析プラットフォーム「Sensor Tower」及びサイトトラフィックやユーザー行動の分析ツール「Similarweb」における数値)を比較(株式会社エブリー調べ)。
執行役員 VP of Product|堀田 敏史
─エブリーのデザイン組織は今、どんなフェーズにあるのでしょうか。
(堀田)現在「デリッシュキッチン」は、「レシピ動画メディア」から「AI料理アシスタント」への進化という、大きな挑戦の最中にあります。AIがユーザーに寄り添う体験を作ろうとすると、「そもそもユーザーは何に困っていて、どんな体験を届けたいのか」を突き詰めないと、良いものになりません。
たとえば料理でいうと、レシピを探す瞬間だけを見ていても本質は掴めない。「冷蔵庫に何があるか」「今日はどれくらい疲れているか」「家族は何人か」など、複数の文脈の中で人は何を作るかを決めています。その一連の体験のどこに価値を届けるのかを設計しなければなりません。だからこそ、UIの表現力だけでなく、ユーザー理解から事業の成果までを一本の線でつなげられるデザイン組織へと進化していく必要があります。
そのためにも、まずは「ユーザーがなぜこのサービスに興味を持ち、使い始めてくれるのか」「他のサービスではなく、なぜこちらを選んでくれるのか」という原点に立ち戻らなければなりません。 そこを深く理解したうえで体験を設計し、ビジネスの成果へとつなげていく。当たり前のことのようですが、AI時代だからこそ、この本質にどこまでもこだわっていきたいと思っています。
─「AI料理アシスタント」への進化を目指すなかで、デザイナーにとっての面白さはどこにありますか。
(堀田)料理の意思決定というのは、実はすごくセンシティブなんです。同じ人でも、その日の疲れ具合、気分、余っている食材や家族の状況で「何をつくりたいか」はまったく変わる。画一的な機能提供ではなく、その人のその日のコンテキストに寄り添った提案をどう届けるか。レシピを決める瞬間だけでなく、調理中に手がふさがっているときのサポートまで、料理体験の全体に寄り添っていく。AIだからこそ挑戦できる領域が、大きく広がっています。
もう一つ、個人的に大事にしたいのが感情の面です。毎日料理をしていても、誰かに褒められたり、毎回感謝されたりする機会がそう多くなく、小さな孤独を感じている人もいるのではないかと思っています。機能的なサポートだけでなく、励ましたり寄り添ったりという感情のケアまでできたら、と考えていて、toCのプロダクトでこの体験に真正面から挑めるサービスは、まだそう多くないと思うんです。
(大村)エブリーのデザイナーは少数精鋭の組織なので、こうした上流の体験設計から関わることができる裁量があります。体験の根本から思考を深めたい人には、とても面白いフェーズだと思います。
デリッシュキッチンカンパニー プロダクトデザイナー|大村 博子
「AIファースト」と越境の先にある、開発組織のかたち
─エブリーは全社的にAI活用を推進する「AIファースト」を掲げています。デザインの現場では、どう実践されていますか。
(堀田)エブリーでは、全社・全職種でClaudeを導入しており、現在は個人がAIを使いこなすフェーズから、組織として使いこなすフェーズに入っています。社内データとの接続なども含めて、プロダクト開発のプロセス全体をAI前提でアップデートしているところです。
グッドパッチさんと進めている「デザインシステムをAIレディな形に整えていく取り組み」もその1つです。目指しているのは、UIの作成や実装といった作業をAIに任せられる状態をつくり、そこで生まれた時間を、デザイナーやエンジニアが仮説の探索や検証、AIがつくったアウトプットの評価により多く使えるようにすること。仮説検証のサイクルを増やせれば、これまで出せなかった精度のUIを提案できるようになりますし、届けられる体験の質そのものを、もう一段上げていけると考えています。
(大村)また、職種や組織を越境した取り組みも生まれてきました。
以前は、FigmaのUIデザインを渡して「こういう動きにしたい」と言葉やドキュメントで説明して、実装を待ったりPdMと認識合わせする、というのが基本の流れでした。今は、動きや状態遷移までAIとSwiftを使ってある程度プロトタイプの状態にしてから渡せるので、エンジニアやPdMに見せた瞬間に直感的に挙動が伝わります。解釈のズレによる手戻りが減って、認識合わせに使っていた時間を、より本質的な議論に使えるようになりました。
(堀田)デザイナーが早い段階で動く形まで持っていけると、エンジニアも実装の見積もりや技術的な懸念を早いタイミングで出せます。結果として、手戻りが少なく、リリースまでのサイクルが全体として速くなります。AIがデザイナーとエンジニア間の「翻訳コスト」を大幅に減らしてくれている感覚がありますね。デザイナーがコードや実装の詳細まで理解していなくても、意図をそのまま形にして渡せるようになったのは大きな変化です。
執行役員 VP of Product|堀田 敏史
─他に、エブリーの開発組織に根付いている文化があれば教えてください。
(堀田)「デリッシュキッチン」では、ユーザーの声を定量データとn=1の生の声、その両方から捉えて意思決定する文化があります。
(大村)ユーザーに向き合うために、外に出て一次情報を取りにいくこともためらいません。社内に閉じず、必要なら世界のトッププレイヤーにも会いにいく。エブリーにはそういう前のめりさがあると思います。
実際に、iOSの大きなデザイン刷新をした際、Appleが開催していた勉強会にデザイナーとエンジニアで一緒に参加したことがあります。セミナー形式で設計思想の説明を受けた後、個室で1時間ほど個別に相談できる時間がありました。「この表現はセオリー的にどうなのか」「他社はどう対応しているのか」といった深い疑問まで、担当の方に直接伺うことができました。
(平尾さん)デザイナーとして貴重な時間でしたね。OSをつくっている側の設計思想を、一次情報として直接聞ける機会はそうありません。しかもデザイナーとエンジニアが一緒に行っているので、その場でデザインと実装の両面から議論ができる。持ち帰ってすぐ、対応方針の解像度が一段上がりました。
株式会社グッドパッチ UI/UXデザイナー |平尾 帆野佳
デザインで、事業を前に進めたい人へ
─最後に、これから仲間に加わる方へメッセージをお願いします。
(堀田)決められたことをデザインするのではなく、ユーザー理解から体験設計、そしてそれをビジネスの成果までつなげていく。そんなデザインをやりたい方と、ぜひお会いしたいです。国内トップクラスの規模で毎日使われるプロダクトで、AI時代の新しい体験づくりに上流から踏み込んで挑戦できる環境が、エブリーにはあります。
(大村)アイデアの探索だけでなく、他職種との関わりの中でAIを活用し、業務プロセスの構築精度を上げていく経験は、今後の市場価値に直結する確かな強みになると思います。本来のデザインの力を発揮し、事業を一緒に推進したい方にはフィットする環境です。
(平尾さん)外部のパートナーとして1年間ご一緒した立場から言うと、エブリーのみなさんは、外から入った私たちの提案も、どんどんチームに巻き込んでくれる方々でした。ユーザーに向き合う姿勢も、職種を越えて議論する空気も、一緒に働いていて純粋に楽しかったです。デザインで事業に踏み込みたい人には、本当に良い環境だと思います。
もちろんまずはカジュアル面談からでも構いませんので、デザイン組織の現状やAI活用の現場感について、率直にお話しできればと思います。少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひお気軽にお声がけください。

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