海洋環境に恵まれ、豊かな水産物を楽しむことができる日本。水産物は美味しいだけでなく、高い栄養特性と機能性を兼ね揃えており、健康にも良いことがわかっています。それにも関わらず、近年日本での水産物消費は減少し続けているのが現状です。適切な管理の元で持続可能な資源と言われる水産物資源を未来へつなぐために、私たちにできることはなんなのでしょうか。
四ヶ所 信之 様
農林水産省 水産庁漁政部加工流通課 課長補佐
菅原 千遥
取締役 執行役員 DELISH KITCHEN カンパニー長 共同創業者
はじめに
エブリーは社会に信頼されるメディアづくりを使命として、コンテンツのチェックやフロー、ルールを外部の有識者とともに整備するなどのアドバイザリーボード活動を積極的に実施しています。また、その中で関わりのある有識者の方をオフィスへお招きし、社内講演会を開くことで実際の業務に携わるメンバー1人1人の幅広いインプットを支援しています。
今回は農林水産省の四ヶ所様をお招きし、水産物の消費拡大に向けた取り組みとその背景について伺いました。
海洋環境に恵まれた日本
四ヶ所:日本の排他的経済水域は、国土面積の約12倍であり世界で6番目の広さであるとともに、世界三大漁場の一つを擁しています。日本の周辺は、寒流と暖流がぶつかり合っていることから、冷たい水を好む魚と温かい水を好む魚の両方が回遊・生息する恵まれた海となっており、日本の周りの海には約3,700種(うち約1900種は日本固有)の魚がいると言われています。また、河川等の内水面においても多様な魚がおり、地域ごとに特色のある漁業が営まれてきました。
日本で獲れる多種多様な水産物は、地域ごとに特色のある「魚食文化」を生み出し、各地に水揚げされる様々な水産物をその気候・風土の中でおいしく食べるため、郷土料理や加工品が考案されその伝統は今なお各地で受け継がれています。
また、水産物は、優れた栄養特性と機能性を持つ食品であり、水産物の摂取が健康に良い効果を与えることが、様々な研究により明らかになっています。
日本における食用魚介類の消費量は減り続けている
四ヶ所:世界では1人当たりの食用魚介類の消費量が過去半世紀で約2倍に増加し、近年においてもそのペースは衰えていません。一方で、日本の食用魚介類の消費量は、約50年前の水準を下回るまでに低下し、世界的に見ても大幅な減少をしているのは日本だけです。
日本の水産物の年間消費量は2001年度(平成13年度)の40.2kgをピークに減少傾向にあり、2021年度(令和3年度)には23.2kgまで減少し、2011年度(平成23年度)には初めて肉類の年間消費量を下回りました。
四ヶ所:調査によると、魚料理自体は好きで食べたいという方が多い一方、魚特有の扱いにくさや調理の手間といった意識が消費にブレーキをかけているのが現状です。水産物等に含まれるEPA・DHA など「健康に良い」といったプラス特性も、かなり認知が進んでいるものの、消費を拡大するまでに至っていません。
魚を食べる理由は、おいしさに加えその栄養価、そしてサステナブルな資源であることが挙げられます。日本人にとって水産物は、生命の維持に欠かせないたんぱく質の重要な摂取源です。日本人が摂取するたんぱく質のうち約17%が魚介類で、動物性たんぱく質の摂取量に占める魚介類の割合は、約30%にも上っています。
また、自然の生態系の一部である水産資源は、使えば消失する鉱物資源や農畜産物とは異なり、食物連鎖の中で人が手を加えずとも、自然の力によって産卵・成長を通して、再生産される持続的な資源です。そのため、適切に管理すれば永続的に利用が可能となる特性を持っています。日本では適切に水産資源を管理しており、また養殖業においても持続可能な生産を推進しているため、魚を選択して食べることは、 SDGsの「持続可能な生産消費形態を確保する」(目標12)ことにつながり、SDGs達成に向けた消費行動でもあるのです。
毎月3〜7日は「さかなの日」
四ヶ所:こうした背景から、消費者の皆様にもっと魚を食べてもらいたく、水産物の消費拡大の取組を官民協働で推進するために、農林水産省では毎月3〜7日を「さかなの日」と制定しました。コンセプトは「さかな×サステナ」で、魚を選択して食べることは、SDGsの「持続可能な生産消費形態を確保する」ことにつながり、SDGsの達成に向けた消費行動であることを謳っています。
「さかなの日」の賛同メンバーは811(2023年11月30日時点)に上り、多くの企業や民間団体などの皆様とともに取り組みを実施しています。この取り組みには『DELISH KITCHEN』にも参画していただいています。
『DELISH KITCHEN』の取り組み
菅原:四ヶ所様、貴重なお話ありがとうございました!
魚を食べることは、未来に海の資産をつなげていくための消費行動なんですね。
多くのユーザーに使っていただけるメディアを運営する私たちだからこそ、これからも正しい情報の発信をし、ひとりひとりが未来へつながる消費行動を考えるきっかけになればと思いました。
講演実施後のアンケートでは、食生活にもっと魚を取り入れたい、魚を美味しく食べてもらえるための発信をしていきたい、といった声が寄せられました。
・ライフスタイルの変化(共働きの増加等)による簡便ニーズの増加は要因として納得感もありつつ、子供の頃は親から「健康のために魚を食べるように」と教えられましたが、健康にまつわる食料品の選択肢が多様化しているなと感じており、より一層魚を食生活に取り入れることの優先度が落ちてしまっているのだろうなと思いました。持続可能性の観点からも魚を食べる重要性を本日学べたので、積極的に食事に取り入れていこうと思いました。 ・海に囲まれた日本という土地で様々な種類の新鮮な魚を食べられるのはとても恵まれているのだなと改めて実感するとともに、そんな環境に身を置きながら魚よりもどうしてもお肉が食卓に並ぶことが多い自身の食生活を振り返って反省しました。生の魚だけではなく加工品を購入したり、ふるさと納税を活用するなどの購入方法や、冷凍保存にするなど保存方法の工夫は一個人としても積極的にしていきたいなと思います。 |
菅原:これまでも『DELISH KITCHEN』ではさまざまな取り組みに賛同し、社内で制作しているレシピ動画の配信のみならず、コラボレーション動画を制作しSNSへ投稿したり、イベントに積極的に参加するなど、SDGsに向けて私たちができることを実行してきました。
「さかな×サステナ」がコンセプトの「さかなの日」に賛同し、『DELISH KITCHEN』で簡単においしく作れる魚料理レシピの特集を公開しています。面倒な下処理の工程を無くしたレシピや、調理法を工夫した時短レシピも紹介していますので、ぜひこの機会に作ってみていただきたいです。
エブリーは、世界共通の目標であるSDGsが目指す、「誰一人取り残さない」持続可能でより良い社会の実現のために、さらに取り組みを推進していきます。
▼エブリーの目指す世界
https://corp.every.tv/mission
エブリーはこれからも、事業を通じてサステナブルな社会の実現を目指し、前向きなきっかけをひとりひとりの日常に届けてまいります。
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